あらた先生
あらた先生が解説します!

 所得税法では、洗い替え法だけが認められています。よって、差額補充法の会計方針をとっていても、洗い替え法の方法で所得税の確定申告をしなければなりません。

前年に貸借対照表に計上した「貸倒引当金」を全て、「貸倒引当金戻入」として当期の事業所得の総収入金額に算入します。つまり、収益とみなされるわけです。前年に、多めに引当金計上しても翌年の税金増として跳ね返ってくるので、毎年コンスタントに引当金計上するか、あるいは、貸倒の危険性が極めて高いものだけ計上するとよいでしょう。
 なお、貸倒が決定的で確実となったら、「貸倒損失」として、全額必要経費とします。

ところで、所得税法上の貸倒引当金の計上は会計と若干異なります。
 個別法と一括法という方法をとります。個別法は会計でいう、破産更生債権等と貸倒懸念債権が対象で、「全額」・「50%」・「一部必要経費算入」など、ケースバイケースで算入額が変わります。
一括法は、会計でいう一般債権で、青色申告が認められている人だけが引当金を繰り入れられるもので、一定の控除ののち、5.5%を乗じて必要経費算入します。

販売先と売上債権の協定を結ぶ事や、貸倒引当金・貸倒損失の会計や税務も、広く深い経験と知識が必要になってきます。税理士との相談が欠かせません。
 そのような難しいことはゴメンという方は、業態にもよりますが、現金主義会計とし、債権や貸倒のない経営・経理をとると良いかもしれません。現金会計でも、適切な個人会計により、青色申告は受けられますので問題ありません。

★まとめ
 所得税法を考慮するなら、個人事業主は、初めから「洗い替え法」を採用した方が良いでしょう。

 

○ 仕入れ・製造後、価値の低下がはやい商品を扱ってますが、何か救済措置はないのですか?

青色申告者は、棚卸商品の売上原価の算定で「低価法」をとることができます。

●低価法 : 青色申告者のみが、原価法に換えて、この低価法をとることができます。通常の原価ベースでの年末棚卸資産評価額と、時価ベースの年末棚卸資産評価額でいずれか少ない金額である納税者有利な方を選択して計上することができます。

 売上原価(必要経費) = 年初棚卸資産評価額 + 本年仕入れ総額 - 年末棚卸資産評価額

 (注)年末棚卸資産評価額原価 or 時価 のいずれか少ない方を計上

 つまり、棚卸資産の価値低下が著しい場合ほど、年末棚卸資産評価額を低く算入でき、結果、売上原価算入額を多く計上できるということになるわけです。

 なお、対象になりやすい業種・業態としては、デパート・スーパー、食品関係、PC・IT関連、出版関連あたりではないでしょうか。

 特に申請しないと、法定評価方法である「最終仕入原価法」がとられます。価値が著しく下がっていたとしても、直近の仕入れ価額をとることになり、実質的損失があってもそれを計上できなくなります。節税のチャンスを逃すのはもったいないので、是非、青色申告し、低価法を選定されることをお勧めします。

 

○ 店舗とマイホームでは減価償却の仕方が異なるのですか?

はい。異なります。

店舗の減価償却 : 事業所得の必要経費や資産損失したさいの未償却残高を求めるために所得税法上の減価償却計算をします。こちらは基本的に会計学で学ぶ法人税法上の減価償却方法と同じと思ってよいでしょう。なお、貸し付けているアパートや貸家の減価償却費は不動産所得の必要経費に、山林関係の減価する資産(伐採用機械、運搬モノレールなど)の減価償却費は山林所得の必要経費に、趣味による減価する資産(楽器など)は雑所得の必要経費に算入します。

マイホームの減価償却 : 譲渡所得の取得費算出のために所得税法上の減価償却計算します。耐用年数を1.5倍(1年未満切り捨て)し、旧定額法しか適用できないのが特徴的で、このようにして求めた会計でいう減価償却累計額を「減価の額」といいます。取得価額から減価の額を差し引き、取得費(会計でいう簿価)とし、譲渡所得の控除項目とするのです。なお、家事費ですので、減価償却費として毎期費用計上することはしません。

 

○ 自宅の一部を事務所としてますが、水道光熱費、電話代、通信費など全額必要経費にいれてもいいですか?

NGです。事業所得の必要経費部分と家事費部分にしっかり分けなくてはならず、かつ、家事費部分は必要経費に計上することができません

 所得税法上、居住用部分に要した水道光熱費などは単に生活費とされ、「家事費」として扱われます。国税庁の言い分としては、所得控除で引いているからいいでしょうということなのでしょう。

 事業部分と家事費部分の分け方としては、以下の通りです。

それぞれメーターなどで別々に測定し、別々に使用料金が把握できる場合 : 後日電気会社・ガス会社などから送付される領収書のうち、事業部分の領収書だけを、事業所得の必要経費とします。

メーター分けはしてないが、事業用床面積や利用時間を定めている場合 : 例えば、自宅の30%を事業に利用しているとあれば、全体の水道光熱費に30%乗じた分だけ必要経費とすることになります。

区分が明らかではない場合 : やむなく概算となり、50%を算入します。

 

○ 配偶者に給料を支払ってるのですが、必要経費にできますか?

配偶者への給与については申請次第で扱いが異なります。以下のように、3パターンあります。

一切申請なし : 生計一親族への対価として、必要経費としない規定が設けられており、この場合、必要経費には算入できないことになります。租税回避防止のためです。但し、この場合、配偶者の資産に係る経費(減価償却費や固定資産税)をお客様の所得税の必要経費とできることもあり、一概に申請なしだからと言って、損とも限らないところです。

白色申告者で専従者 : 確定申告でその旨記載した場合、専従者給与として、配偶者86万円控除(子どもの場合は50万円控除)があります。給与支払いがこの額に満たなくとも86万円を基本とします。これには一定の限度があるので、注意が必要です。但し、配偶者も確定申告することになるのと、配偶者の資産の経費は配偶者の確定申告の計算に入る点に注意が必要です。

青色申告で専従者 : お客様が青色申告者で、かつ、一定期間内に「青色専従者給与に関する届出書」を提出している場合、労務相当対価は全額必要経費に算入できます。但し、専従者と同様、配偶者も確定申告することになるのと、配偶者の資産の経費は配偶者の確定申告の計算に入る点に注意が必要です。

起業して間もないのであれば、取引規模も小さいですから、融通がきく「申請なし」が良いかもしれません。

 少し稼げるようになってくると、1人に大きく課税所得がかかることになります。所得税は累進課税ですから、負担を分散して家計全体での節税として、「(白色)専従者」とすると良いかもしれません。

 いよいよ相当稼ぐようになれば、青色申告して特典をうけつつ、かつ、配偶者と負担分散し、節税ができるでしょう。

 

○ 青色申告といいますが、申請するとどれほど得なのですか?

起業したての段階では、白色申告者(青色ではない人)でもいいでしょう。しかし、事業が軌道に乗り、必要経費も種類も金額も増え、取引規模が拡大し、また、売上債権など取引の仕組みも複雑化してくると青色申告した方が、必要経費算入項目が増え、様々な特典の恩恵の影響が大きくなるので、是非受けたいところです。以下に特典を箇条書きします。・青色申告特別控除
・青色事業専従者給与
・貸倒引当金の一括法
・棚卸資産の低価法
・減価償却費の一括計上
・小規模事業者の現金主義会計
・純損失の繰越控除
・繰越還付

 

○ 震災で事業用倉庫と自宅が全壊しました。所得税の救済はありますか?

どちらも所得税を減らす要素となります。また、両者とも確定申告が必須です。但し、計算のポイントは異なるので、それぞれ説明します。

事業用倉庫の全部損壊 : 事業所得の必要経費に「資産損失」として全額を計上できます。但し、保険金で補てんされた部分や、一部の廃材が売れそうなら、その金額は差し引かねばなりません。ちなみに一部損壊の場合はかなり複雑な計算となります。

自宅の全部損壊 : 所得控除の「雑損控除」の対象となります。自宅に限らず、現金、衣服や時価30万円以下の貴金属類も生活に通常必要な資産として、この雑損控除の対象とできます。さらに生計一親族のうち、所得が38万円以下の人の損失分も加えられます。但し、所得や災害関連費用に応じた一定算式の足切り額があります。

 両者とも、控除対象の選定や計算が複雑ですので、税理士に相談・申告代行を受けるべきかと思います。

雑損控除は、災害・盗難・横領の3つだけが正当な事由として認められ、その他の事由では控除対象とはできません。それに対し、事業資産の資産損失は、災害だけでなく、建て替えのための取り壊しなど、事由を問わないというところも異なるポイントです。

 

○ 親や子、親戚の医療費で節税できますか?

所得税の医療費控除を受けましょう。あなたと「生計を一」にする親族ならみんなの分をあなたの医療費控除の対象にすることができます。
 ここで、「生計を一」とは、同じ財布・財源を使っているというと言えます。一緒に住んでいるとは限らず、一人暮らしの大学生の息子なども入ります。なお、その生計一親族がいくら稼いでいても関係なく、所得に関わらず対象とすることができます。
 もし、何人か稼ぎ手がいて所得税を払っているのであれば、最も稼ぎが大きい人に所得控除を一極集中的につけるとよいでしょう。所得税は累進課税ですから、所得が大きいほど、税率が高く設定されるためです。結果的にその生計一親族全体の所得税を節税できます。

<事例>
 仮に、家族全員の今年の医療費総額が60万円だとしましょう。(医療費60万円:家族の誰か1人が3カ月入院・手術 + 家族4人として全員の診療費代程度を想定)

 ・所得金額750万円のお父さん(大企業の課長級を想定)の確定申告に使うと、、、
 (60万円-10万円)×税率23%=11.5万円の控除

 ・所得金額250万円の息子さん(アルバイト+アフリエイトの学生を想定)の確定申告に使うと、、、
 (60万円-10万円)×税率10%=5万円の控除
 と、これだけ差がでてきます。この税率の差が稼いでいる人に付ける理由です。

 ところで、逆に、同じ家に住んでいたとしても、「生計を別」にしている人の医療費は、あなたの医療費控除の対象に入れられませんので注意が必要です。例えば、どんな人・場合かというと、すでに独立し別生計の息子が一時帰省してきたときに病院に行ったときの医療費がそうでしょう。頼まれて数日預かった友人の子を病院に連れて行ったときの医療費もそうです。これらはあなたが出費したとしても、あなたの医療費控除にはできません。

 

○ 薬局で肩こり用湿布と美容のサプリメントを買いましたが、医療費控除にできますか?

 

肩こり用湿布は、所得税の確定申告の際、医療費控除の対象にできますが、美容のサプリメントはできません。
同じドラックストアで市販しているものですが、この違いはなぜでしょう?
 これは、所得税法上、治療・療養によるものは「可」、それ以外の治療とみなされないものは「不可」とするからです。医療費控除の対象となるものと、ならないものが混ざったレシートは、なる部分だけ自分で抽出して計算しなければならなくなるため面倒になります。よって、予め、別々に会計し、レシートを区別しておきましょう。

 以下に、医療費控除の対象に「なる」もの・「ならない」ものをまとめておきましょう。

★医療費控除の対象と「なる」もの
1.病気やケガの治療・出産による診療代金・入院費(医師・歯科医師・保健師・助産師・あん摩師・はり師・きゅう師などへの対価)
2.療養施設や介護施設の入所代金・人的役務の代金(看護師・介護福祉士への対価)
3.1や2での通院・入院した際の通院費(*タクシーOK)や食事代(病院の喫茶店はダメ!)
4.治療に必要な医薬品代金(*調剤薬局に限らず、ドラックストアもOK!)

★医療費控除の対象と「ならない」もの(誤解されやすいもの)
1.医師などへの謝礼金品や見舞客へのお返し代など
2.医療費控除となるものでも、年内未払いとなったもの(翌年に払えば、翌年の申告に使えます。)
3.治療ではない診察・入院費(美容整形費用など)
4.健康診断費(但し、重大な疾病が見つかったら、算入できます)
5.診断書など各種証明書(よって、極力、診断期間を長めに書いてもらうのがよいです)
6.病気やケガの「予防」に関する支出(健康器具やサプリメントなど)

★医療費控除に関して、まだまだコンテンツがあります。

医療費控除を受けるためには、必ず確定申告することが必要となってきます。(会社はやってくれません)
毎年、確定申告の時期になると「確定申告の手引き」が発行されますので、それを参照すると良いでしょう。
なお、不明な点があれば、税理士やファイナンシャルプランナーに問い合わせるのも手です。

 

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