あらた先生
あらた先生が解説します!

 製品・商品の製造販売をする上で、製品・商品の外部又は内部に「異物」が付着したり、混入したりするケースが稀にあります。得意先や消費者が発見した場合には、「クレーム」として営業担当が持ち帰り、場合によっては損害賠償になるということもありえます。それを防ぐためにも、異物の発生原因・混入の原因を突き止める必要があり、カイゼン活動の一環としても、クレーム処理としても重要な作業として、「異物分析」があります。 

 この異物分析について、工学修士・技術コンサルタントで、品質管理部の元プロが行う科学分析の手法を記載します!

 
【1】異物(検体)の確保

 異物の形態にもよりますが、ビニル袋、シャーレや保存ビンを使うのが一般的です。品質管理部以外の素人がよくやりがちなミスとしては、素手でつかみ、セロハンテープで紙に貼り付けたりされるケースです。手の油脂の成分とセロハンテープの有機物成分で分析しにくくなりますから、事前の注意喚起が必須です。「検体はピンセットで掴み、シャーレに入れる事」など、現場にマニュアルを貼るなどするとよいでしょう。なお、プロである品質管理部の者も異物返却まで、検体の計画的利用と管理を怠らないことが大事です。さらに検体は小さい場合が多く、失くしやすい点も要注意でしょう。

【2】形状確認・写真撮影 

 異物のありのままの形状を「デジカメ」の「接写モード」で撮影します。また、検体の大きさに関わらず、表界面を観察するため、「CCDカメラ」(50倍~200倍)などで、表面観察結果としてデジタル撮影をします。この時点で、大体の類推もできる場合があります。「ざらざらしてる」「ベトベトしてる」「光沢あり・なし」「昆虫の体の一部?」など、素直に思ったことをノートに所見として記載しておくと良いでしょう。感性や経験値も大切な要素です。

【3】大分類を類推(特定はしない) 

 異物のあった状況(場所・担当者・工程・時間帯)をイメージします。また、金属光沢の有無で金属かどうか判別します。結晶性があれば、無機物と判別し、また、油状であれば、有機物と判別します。曖昧な情報ですが、レポートの際に必要な1データとなります。プロはこの時点で大体なにかわかりますが、誤診の可能性もありますから、この時点では自信があっても断定しない点は大事です。「金属かも?」くらいに留めます。

【4】科学的測定・分析 

 様々な分析機器があり、それぞれからわかる情報は異なります。

 
 ●電子顕微鏡でわかること

 形態を問わず、分析できます。結晶形状していれば、無機物です。電子線をあてて、黒く画像が飛んだら有機物です。なお、有機物を電顕で見たいのなら、金蒸着又は金スパッタリングで観れるようになります。昆虫の体の一部ということもありますので、金蒸着で電子顕微鏡観察することで、毛や複眼などから虫の種類まで特定することもできるかもしれません。製造工程のどこに殺虫用の紫外線装置・高圧線装置を設置するかの検討に役立つかもしれません。

 また、電子線の加速度(kV)を上下させると、見え方が多少変わるので、観察に役立つかもしれませんよ。とにかく映像を残しておきましょう。あとあと結論が出たときの対策案などにも役にたつことでしょう。

 
 ●EPMAでわかること

 「無機物」の分析に適し、有機物の分析には適しません。「元素」レベルでの組成分布、特定の元素の含有率(%)がわかります。これらデータと、既存の社内材料のリファレンスデータと比較・一致するものを探すもよいでしょう。さらにPC用のサーチソフトを使うと絞りやすいです。例えば、鉄に少量のクロムが検出されたら、「ステンレスのかけら?」と推定するようなイメージです。

EPMAでの組成分析推定の一例
主に鉄のみ製造工程中の「軟鋼」でできた機械・レーンなどが欠けて、製品に混入した?
鉄にクロムやモリブデンなど少々製造工程中の「ステンレス」でできた機械・レーンなどが欠けて、製品に混入した?
主にアルミ「アルミ」製品の一部が欠けて、他のアルミ製品に混入した?
主に炭素有機物なので、FTIRでのさらなる分析をしないとまだ何もわからない。
EPMA分析の結果と推定の一例

 
 ●FT-IRでわかること

 無機物の分析には適さず、「有機物」の分析に適します。「赤外線」をあて、分子間結合特有の振動数(cm-1・カイザー)のピークからチャートを作成し、既存の社内材料データと比較・一致するものを探します。さらにPC用のサーチソフトを使うと絞りやすいです。例えば、あらた先生は、FT-IRから、以下のような物質の同定をしたりしていました。

コーヒー缶やジュース缶の内面をコーティングしているポリエチレンテレフタラートで構成されるフィルムの一部が剥がれ、その一部が商品内部の液体のなかに混入したものと推定
昆虫の混入であると推定
機械油が製造工程からたれてきて、製品の内部に付着したものと推定
ビニルテープが付着したものであると推定
製造レーンのプラスチックの一部が欠けたものであると推定
得意先の商品(コーヒーやジュース、お酒、食材)そのものであると推定
FTIR分析結果から推定した内容の一例

 
 ●クロマトグラフでわかること 

 「液体」と「気体」なら分析できます。「分離される時間」が物質ごとに違う性質(粘度など)を利用して、物質を特定します。

 例えば、コーヒーやジュースなどの液体や液状の食材の一部が付着したのか? 機械油が付着したのか? などの分析ができます。


 ●その他分析機器

 異物分析で一般的なのは上記4点です。中学校や高校の理科ではありませんが、「リトマス試験紙」、「PHメータ」、「中和滴定」などのアルカリ・酸度測定も物体や材料の推定のためにはたいへん有効でしょう。「糖度計」や「臭気判定士」による「臭気判定」という手法を用いるケースもあるかもしれません。「硬い」・「もろい」・「ネバネバする」・「くさい」などの「人間の感性」も重要な分析ツールですよ。

 さらに踏み込んだ分析をしたいのであれば、医療などで用いられる「CT-スキャン」も使うケースがあります。非破壊で内部を観察できるメリットがあります。さらには、異物分析としては超マイナーですが、「遺伝子解析」や「炭素年齢分析」などするケースもあるのかもしれませんね。「工業レベル」ではちょっとやりすぎかもしれません。

【5】解析 

 これまでの測定データから、ある程度「推定」をしてきましたが、異物が実際になんであるかをついに「特定」します。サンプルデータから、既知のリファレンスデータに直接ヒットするなら、物質がなにかを「特定」でき、異物分析としては理想的な結果となります。「特定」が無理なら、「消去法」による「推定」をすることになりますが、推定も大事な結果として報告の1データとなります。また、「測定不能」・「不明」もひとつの大切な成果です。リファレンスデータにないだけの未知の物質かもしれませんよ?社長賞クラスの偉大な発見だったりするかもしれませんね。このとき、なにか結果を言わなければいけないと思って、ムリに結果をねじまげないことです。改ざんやウソの証言は、カイゼンになりませんし、もしかしたら、将来の大型クレームや最悪退職などにも関連してくるかもしれません。わからんかったものは、わかりませんでしたと答えるのが、100点満点の正解となります。

【6】レポート作成 

 異物の写真、表界面写真、測定データ、解析結果、原因、場所・工程、特定した物質の名称と影響等を記載します。クレーム、単なる分析依頼で、それぞれ書式は大きく異なりますから、それぞれに合ったフォーマットを事前に用意しておくとよいでしょう。クレーマー相手に必要以上の事を記載すると、火に油を注ぐ結果になりかねません。物質が特定できなかったのなら、わかる分のデータとその旨記載します。

 なお、レポート作成は正直なのが最も大事で、ウソの記載や改ざん等は決してしてはいけません。上記5同様、嘘を塗り重ねて破滅しかねません。後々のカイゼンのためにも、正直が一番です。

【7】報告

 場合によっては、営業部員に同行して消費者や得意先へ、プロとしての説明も必要な場合があります。理工系出身の多い品質管理部門の者といえど、話術も鍛えておきましょう。但し、あくまで分析のプロですから、ハッタリや嘘だけはNGです。事実のみをありのままに述べるに留めましょう。

 異物・検体は返却するのが一般的なので、分析依頼・受領の時点から計画的に使い、残量が最も多くなる手法を選択しましょう。勝手に捨てると訴えられかねませんよ。こわいこわい。

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    2020年9月23日 記載