助成金・給付金・協力金・支援金などの行政から受ける一時金とその申請のための経費の所得税・消費税の取扱いは?
所得税の非課税収入と、消費税の非課税売上げを混同しないよう留意ですね

いやぁ~…お陰様で年末年始を家族と存分に楽しみました~。

本年も「あすも/道明誉裕税理士事務所」を、何卒よろしくお願い申し上げます。

Nさんは、今回の所得税・消費税の確定申告について、準備もだいぶ進んでいるとの事でしたね。
ところで、去年もコロナ禍でたいへんな1年でしたが、行政から助成金などの一時金の支給を受けたり、その申請のための経費を支払ったりしましたか?

そうですねぇ。ありましたよ?
手広く色んな業態で経営しておりますが、飲食店も経営しています。コロナ禍のご時世ですので、一時休業や営業時間の短縮、アルバイト等の雇用の調整などを余儀なくされましたね。
休業支援金、特別定額給付金、感染拡大防止協力金、一時支援金、雇用調整助成金、家賃支援給付金などの一時金を行政から受け取りました。
これらの申請のために、中小企業診断士の先生に申請の代行を依頼し、報酬分の支払いがありましたね。その際、中小企業診断士事務所への往復交通費も支出しましたね…。
もしかして、今日はその論点ですか?

受け取った助成金等と、そのための経費について、所得税と消費税の取扱がどうなるかについて、
仕訳や所得区分・課税区分など、大丈夫そうですか?

う~ん…
少々自信が無いのですが、以下のような感じでは、いかがでしょうか?
【Nさんの個人的なお考え】
・受け取った助成金等は、すべて非課税(所得税)かと思ったので「事業主借」として仕訳し、「非課税売上げ」(消費税)とするのかなぁ…?
・そのための支払った経費は、すべて必要経費に算入し、すべて課税仕入れになるのかなぁ…?

A先生…きっつい問題出すわ~
見つめ合うNさんとA先生…果たして正解か、不正解か…

…残念っ!
そのままのご認識で確定申告すると、税務上の重大ミスになるかもしれませんよ?
特に、所得税の非課税収入と、消費税の非課税売上げは、意味が全く異なる点には、くれぐれも留意しましょう!

あひぃっ…
詳しく教えて下さいっ!

当オフィスによる考察を、以下に記載します。
<受け取った行政からの助成金等>をどう取り扱うか?
【所得税】
・所得税として、課税となるか・非課税となるかは、助成金等ごとに個別の取扱いが既に公表されている様子です。よって、理論的に考えるわけでなく、リストに従って個別に判断することになるかと思います。
税理士会資料・令和3年12月「所得税 消費税 誤りやすい事例集」から一部抜粋した表を、以下に用意しましたので、ご確認ください。
【消費税】
・消費税は、ズバリ「不課税」として、取り扱うことになるかと思われます。
国または地方公共団体からの補助金や助成金等については、一般的に対価(なにかするかわりに、別のなにかをもらうもの)として支払われるものではないため、対価性なしとして、「不課税」とする考え方がとられている様子ですね。このように、理論的にも考察可能ですし、消費税法 法令解釈通達 5-2-15という通達もあります。
ところで、不課税であって、非課税売上げではないので、課税区分にはくれぐれもご留意ください。課税売上割合や計算方法などの重大ミスにもつながりますので、慎重に判断したいところですね。
所得税が非課税となる 受け取った助成金等の名称 |
新型コロナウィルス感染症対応休業支援金 |
新型コロナウィルス感染症対応休業給付金 |
特別定額給付金 |
子育て世帯への臨時特別給付金 |
学資として支給される金品 |
学生支援緊急給付金 |
心身又は資産に加えられた損害について支給を受ける相当の見舞金 |
低所得のひとり親世帯への臨時特別給付金 |
低所得の子育て世帯に対する子育て世帯生活支援特別給付金 |
新型コロナウィルス感染症対応従事者への慰労金 |
他 |
所得区分 | 所得税が課税される助成金等の名称 |
事業所得 | 持続化給付金(事業所得者向け) |
東京都の感染拡大防止協力金 | |
個人事業者等のための一時支援金・月次支援金 | |
雇用調整助成金 | |
小学校休業等対応助成金(支援金) | |
家賃支援給付金 | |
農林漁業者への経営継続補助金 | |
感染拡大防止等支援事業における補助金 | |
特別利子補給制度利子補給金 | |
一時所得 | 持続化給付金(給与所得者向け) |
GoToトラベル・イート給付金・チケット | |
雑所得 | 持続化給付金(雑所得者向け) |
(補助金、奨励金、助成金等)
5-2-15 事業者が国又は地方公共団体等から受ける奨励金若しくは助成金等又は補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第2条第1項《定義》に掲げる補助金等のように、特定の政策目的の実現を図るための給付金は、資産の譲渡等の対価に該当しないことに留意する。(平23課消1-35により改正)
引用 : 消費税法 法令解釈通達 5-2-15

なるほど~…。
所得税は、リストからの選択を間違えなければ大丈夫そうですね。
消費税は、不課税と決まっていて、割と結論は簡単ですが、考え方は思ったより難しかったですねぇ。非課税売上げとしないようにくれぐれも気をつけます。
では、行政からの助成金等のための経費については、いかがでしょうか?

では、続いて…
<行政からの助成金等申請などのために支払った経費>
【所得税】
受け取った助成金等が事業所得となるものなら、そのための経費も事業所得の必要経費になるかと思います。なお、雑所得も同様の考え方となります。
一方で、給与所得者が受け取った助成金等の場合は、給与所得等に対応するものとなりますので、事業所得の必要経費には算入できないものと考えられます。なお、非課税収入に対応する経費の場合も、条文によると、同様の取扱となると考えられます。
所得税法37条 必要経費を根拠としています。
【消費税】
受け取った助成金等そのものは不課税でしたが、そのための中小企業診断士への代行手数料・往復交通費が、事業のためであれば事業性ありと認められますので、課税仕入れとなり・仕入れ税額控除もできると思われます。
一方で、給与所得者として、助成金等を受けるような場合は、事業者が事業として行うものではありませんので、課税仕入れとはできず、仕入れ税額控除もできないと考えられます。
消費税法2条 課税仕入れの定義を根拠としております。
(必要経費)
第三十七条 その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。
引用 : 所得税法37条 必要経費
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(略)
十二 課税仕入れ
事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供(所得税法第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等を対価とする役務の提供を除く。)を受けること(当該他の者が事業として当該資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるもので、第七条第一項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するもの及び第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるもの以外のものに限る。)をいう。
引用 : 消費税法「課税仕入れ」の定義

深いですねぇ~。
私の考え方のままで確定申告したら、危うく、税法上の重大ミスとなるところでした。
仕訳や所得区分・課税区分について、確定申告の手続き前に、全体を見直してみますね。
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