税金どうでしょう?「SNS誹謗中傷やセクハラ・パワハラ被害で、賠償金・示談金・見舞金をもらったのですが、税金はどうなりますか?」

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損害賠償金を受けたお客様

SNSで誹謗中傷を受けたり、セクシャルハラスメントやパワーハラスメントなどの倫理違反で、心身に被害を受けたとして裁判示談となり「賠償金・示談金・見舞金」を受けましたが、損害賠償金の支払いを受けた「被害者(個人)」と、損害賠償金の支払いを行った「加害者(個人)」の税金はどうなるのですか?

答え)一部の例外を除き、基本的には、被害者の収入は非課税(社会的な配慮)、加害者の支払いは必要経費不算入で控除不可(ペナルティ)と思われます。

あすも代表

ネット誹謗中傷・ハラスメントなど大きな社会問題と化していますが、税金の取り扱い事例集やネットでもほとんど取り上げられていない様子ですので、条文ベースでゼロから考察してみますね。

税理士の道明です。
税理士の道明です。

被害者の受け取りを考察します!

あすも代表

個人vs個人の「損害賠償金」・「慰謝料」・「見舞金」のやりとりなので、税金的な「もうけ」≓「所得」となるのかどうかを考慮する必要がありそうです。よって、「所得税」が考え方のベースとなりそうですね。そして、住民税は所得税を基に計算しますので、「住民税」の対象となるかどうかは所得税の取り扱い次第となりますね。


消費税」はどうでしょう? 

消費税法4条などをひとつにまとめた概念である「国内において事業者が事業として行った資産の譲渡、貸付け及び役務の提供には消費税を課する」の考え方があります。

誹謗中傷やハラスメントなどの倫理違反行為は、事業上のものとは言えないと思います。したがって、事業性無しであるため、消費税法4条の考え方該当しないので、「不課税取引」として消費税の課税対象外取引となりますね。よって、事例の場合には、消費税の申告書には一切登場しないと考えられます。(*「国等の特例」という規定もありますが、今回の事例では関係なさそうです。)


贈与税」はどうでしょう?

民法から、そもそも「贈与」になるのかどうかをひもといてみます。

第二節 贈与(贈与)

第五百四十九条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

引用 : 民法

今回の事例は、お金の動きこそあり、反対給付がないので、一見すると「贈与?」のようにも思えてきます。しかし、「損害賠償金」・「慰謝料」・「見舞金」などの特殊な性質から、「(加害者)おかねあげます。(被害者)わかりました、おかねもらいます。」という「二者間」の善意の意思表示や契約というものではなく、裁判所や弁護士の介入などのため半ば自動的におかねが移転したものと考えられます。よって、贈与契約ではないと考えられることから、贈与税の対象から除外され、贈与税はかからないものと推察されます。なお、税法上の「みなし贈与」などにも該当しないものと思われますが、ここでは詳細は割愛します。

損害賠償金を受けたお客様

では、メインの論点は、「所得税法」となりますね。被害者である私の税金は一体どうなるのですか?

あすも代表

はい。そうですね。では、「所得税法」や施行令・通達など深掘りしていきましょう!

非課税所得

第九条 次に掲げる所得については、所得税を課さない

(略)

十七 保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第四項(定義)に規定する損害保険会社又は同条第九項に規定する外国損害保険会社等の締結した保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金これらに類するものを含む。)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの

引用 : 所得税法

上記条文から、今回の事例のように、被害者が心理面で傷ついた場合などに受け取った損害賠償金などは、「非課税」の収入として分類されると考えられます。非課税を仮に無視したとすると、「一時所得?」の影もチラホラしますが、そもそも10種類の所得区分に区分されませんので、所得税・住民税の申告書に載せる必要がなく完全に税金の課税の対象から除外されると考えられます。

 (非課税とされる保険金、損害賠償金等)

第三十条 法第九条第一項第十七号(非課税所得)に規定する政令で定める保険金及び損害賠償金これらに類するものを含む。)は、次に掲げるものその他これらに類するもの(これらのものの額のうちに同号の損害を受けた者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額が含まれている場合には、当該金額を控除した金額に相当する部分)とする

  (略)

並びに心身に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金(その損害に基因して勤務又は業務に従事することができなかつたことによる給与又は収益の補償として受けるものを含む。)

(略)

 心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金(第九十四条の規定に該当するものその他役務の対価たる性質を有するものを除く。)

引用 : 所得税法施行令

さらに上記の条文で「心身に加えられた損害」の「損害賠償金」・「慰謝料」・「見舞金」について、改めて定義づけされていますね。まさにダメ押しです。これなら範囲も明確で、上記の条文だと、非課税ですよと念押ししてくれていることになりますね。


ただし、以下のように扱いがひっくり返る条文もありますので、要注意です!

9-19 令第30条本文かっこ内に規定する「必要経費に算入される金額を補てんするための金額」とは、例えば、心身又は資産の損害に基因して休業する場合にその休業期間中における使用人の給料、店舗の賃借料その他通常の維持管理に要する費用を補塡するものとして計算された金額のようなもの (略)

引用 : 所得税法法令解釈通達

施行令と通達にある「必要経費を補塡する」ための受け取りは、非課税としないと解釈できます。よって、所得税・住民税が課税されるので注意するべきかと思います。休業補塡のような場合には、不動産所得や事業所得などの総収入金額に計上することになるかと思います。

事例1)・休業中のオフィス賃料や給与100 ・お詫びも含めてもらったおかね110 の場合は?

 → 100を総収入金額に算入、お詫び部分の10は非課税 と考えられます。


また、入院治療費の補塡として受け取ったおかねなどは、医療費控除の各医療費から差し引くものとなってくるので、医療費控除が下がる要素になるかと思いますので、こちらも注意です。

事例2)・入院代金の支払い 100 ・入院代を加害者が負担するものとしてお詫びも含めて受け取った金額 110

→ 医療費控除の対象となる医療費なし 100 △ 110 < 0 、お詫びの部分の10は非課税


もうひとつ、扱いがひっくり返る国税庁の見解もあるので、以下も要注意です!

社会通念上それにふさわしい(相当な)金額のものに限られます」として国税庁の記載(タックスアンサーNo.1700)もあります。被害の程度にくらべて、異常に高い金額をひっぱりだそうとすると、後から税務調査などで、非課税から一転して課税となるかもしれませんので、金額には気をつけた方がいいかもしれませんね。ただ、あまり目立った事例もなく、インターネットなどでも記述が見当たりません。世間一般から見てやたら高額な見舞金を受けたようなケースが想定されますが、必要経費を補塡するものではなく、社会通念上それにふさわしい金額を超えた部分の金額は、なんらかの課税がされる恐れがあります。

消去法から推察すると、個人からの不相応な超高額見舞金受け取りの場合「みなし贈与」などとして贈与税の課税が、そして、法人からの不相応な超高額見舞金受け取りの場合には所得税・住民税の「一時所得」として課税がされるのかもしれません。慎重な判断が必要な様子ですが、いずれにせよ、前者も後者も「累進課税」であり税金も高額になる恐れがある点に要注意となりますね。非課税だと思っていたところからの税務調査での急な高額課税ですので、びっくりすることになるかもしれません。社会通念上OKな範囲も考慮しなければならないため、個別に税理士に相談が必要そうですね。

損害賠償金を受けたお客様

なるほど! 被害者側は、一部の例外に気をつけつつ基本的には税金ゼロとなりそうな雰囲気ですね。

では、にっくき、加害者である人の税金はどうなるのですか?

加害者の支払いを考察します!

あすも代表

ずばり! 所得税法45条で、必要経費などの税金を引き下げる要素には、1円も算入できない明記されております。

(家事関連費等の必要経費不算入等)

第四十五条 居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない

 家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの

(略)

 罰金及び科料(通告処分による罰金又は科料に相当するもの及び外国又はその地方公共団体が課する罰金又は科料に相当するものを含む。)並びに過料

 損害賠償金(これに類するものを含む。)で政令で定めるもの

引用 : 所得税法

「七 罰金」のすぐ下に書いてある点がポイントですよね。罰金と同類だというニュアンスが感じ取れます。

家事関連費の例外規定として、事業遂行上必要なことが明らかなものなど一定の金額は、必要経費に算入できるという規定などもあったりします。しかし、誹謗中傷やハラスメントなどの倫理違反で支払ったおかねは、「事業遂行の上必要」ではありませんので除外されます。よって、キャッシュアウトとしておかねは減りますが、必要経費に算入できないので税金が低くなる要素にはならないという、まさに「ペナルティ(社会的制裁)」的な取り扱いですね。

損害賠償金を受けたお客様

加害者へは「ペナルティ」を、被害者には「救済措置」として、税金面でも社会的な配慮がされている様子ですね。

結論部分を、一覧表にまとめてみました!

税目被害者の損害賠償金などの受け取り加害者の損害賠償金などの支払い
所得税非課税
(*ただし、課税となる例外あり!補塡や社会通念上の金額には留意!)
必要経費不算入
(ペナルティ・社会的制裁?)
住民税同上同上
消費税不課税取引
(税金の対象から除外)
不課税取引
(税金の対象から除外)
贈与税贈与契約ではないので、贈与税の対象外支払い側なので対象外
「心身に加えられた損害に起因する損害賠償金など」の税務上の取り扱いのイチ考察
あすも代表

誹謗中傷やハラスメントなどはあくまで個人のお話しなので、基本的には法人は関係することはないと思います。

しかし、法人の一般社員が、職務時間中会社のパソコンからSNS誹謗中傷などを行って、会社のIPアドレスであることや社員の管理監督責任などを根拠として「法人」が訴えられて「法人」が損害賠償金を支払ったら、この法人はどういう税務会計をするでしょうか? 業務に関係しないものですので、一旦、会社はその一般社員への「貸付金」として計上することになるのかもしれませんね。この時点では損金不算入とされ、後々振り替え処理を検討することになりますが、法人税の考え方も大事になってくるかもしれません。キリがありませんし、今回の事例と関係しませんのでこれ以上は割愛しますが、他にも様々なケースが想定されますよね。


以上のように、判断が難しい部分例外など、様々なケースが想定されますので、実際になにかあったときは、個別具体的に、かつ、慎重に考える必要もありそうですね。税金のご相談は当オフィスまでお問い合わせください!

関係する個人の税金のメニューも多数用意しております。(*詳細はこちらから)


なお、裁判や示談は、弁護士法72条により、弁護士の独占業務です。当オフィスでは裁判や示談などは取り扱えない部分ですので、損害賠償金などに詳しい弁護士の専門家を紹介しますので、お問い合わせください!

損害賠償金を受けたお客様

税金面でも、救済措置や社会的な配慮がたくさんあるのがわかって、安心しました!犯罪を未然に防ぐ抑止力にもなっているみたいですね。

なんにしても、泣き寝入りだけはしないことが大切ですよね! 弁護士さんとも相談してみます!

これでみんな安心です!
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息抜き漫画
「あすもんPDCA」
ハラハラ?編
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具体的なご相談サービス一覧

あすも代表

当オフィスでは、税理士として、税務相談や各種サービスを随時受け付けております。

お客様のために知恵を絞ります!
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お客様のためにさらに研鑽します!
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